絶滅危惧種の多肉植物たち|サボテン・アガベ・リトープスなどの現状と保全


はじめに:美しい多肉植物たちの“危機”

ユニークな形と育てやすさで人気の多肉植物。しかし、その裏で多くの種が絶滅の危機に瀕していることをご存じでしょうか? 特に、サボテンやアガベ、リトープス、パキポディウムなどは世界中で人気が高く、乱獲や環境破壊が深刻な問題となっています。

この記事では、国際的な保護対象となっている絶滅危惧種の多肉植物たちを、分かりやすく、かつ詳細にご紹介します。

絶滅危惧種とは? IUCNレッドリストとCITES(ワシントン条約)

絶滅危惧種とは、近い将来に野生での絶滅の危険性が高いとされる生物のことです。代表的な国際的分類には次の2つがあります:

  • IUCNレッドリスト:国際自然保護連合による分類。EN(絶滅危惧)、VU(危急)、CR(深刻な危機)などのカテゴリがあります。
  • CITES(ワシントン条約):絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を制限する条約。附属書I〜IIIに分類されます。

サボテンの絶滅危惧種

サボテン科は多肉植物の中でも特に多くの種が絶滅の危機にさらされています。観賞目的での密猟や、自生地の開発が原因です。

アズテキウム属(Aztekium)

  • Aztekium ritteri(アズテキウム・リッテリー):非常に生育が遅く、採取後の再生が困難。

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  • Aztekium hintonii:メキシコに自生。採取と鉱山開発が脅威。

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アズテキウムの詳細は下記をご覧ください。

コピアポア属(Copiapoa)

  • Copiapoa cinerea:灰色肌が美しく、コレクターに人気。チリ原産。

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アリオカルプス属(Ariocarpus)

  • Ariocarpus fissuratus:地表からほとんど見えず、自然では見つけづらい。

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ペレキフォラ属(Pelecyphora)

  • Pelecyphora aselliformis:独特のウロコ模様で知られ、CITES I種。

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アガベの絶滅危惧種

メキシコ原産のアガベ属にも、絶滅が懸念される種が複数あります。特に、園芸人気の高い美しい品種が危機にさらされています。

Agave victoriae-reginae(アガベ・ヴィクトリア・レジーナ / 笹の雪)


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細く白い線が入った美しい葉が特徴。野生個体の減少が進んでおり、IUCNではVU(危急種)に分類。

Agave parviflora


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小型で観賞用として人気。乱獲が原因で生息数が激減。

Agave albopilosa


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「白い毛」を意味する種名の通り、葉先に白い毛が生える希少種。

その他の多肉植物の絶滅危惧種

リトープス属(Lithops)

「生きた石」と呼ばれる美しい多肉植物。野生種はナミビア・南アフリカに限定されており、生息地の破壊や気候変動が深刻な問題です。

デュドレア属(Dudleya)

カリフォルニア・メキシコに分布。人気の高まりとともに密猟が横行し、2021年にはアメリカで「デュドレア保護法」も制定。

ハオルチア属(Haworthia)

近年では「Tulista」「Haworthiopsis」などに再分類されつつあり、特に野生個体は環境変化と乱獲により激減。

アロエ属(Aloe)

薬用種の影に隠れがちだが、観賞用の希少種はCITES IIに登録。Aloe polyphyllaなどが有名。

パキポディウム属(Pachypodium)

塊根部が特徴的なマダガスカル原産の多肉植物。特にPachypodium ambongenseなどは、極端に限られた範囲にしか生育しておらず、絶滅リスクが高い。

なぜ絶滅危惧種になるのか?主な原因

  • 密猟と違法採取:野生の希少種がネットで高値で売買されることが背景。
  • 生息地の開発:鉱山、農地、都市開発などで生育地が消滅。
  • 気候変動:乾燥地に生きる種はわずかな環境変化でも致命的。
  • 再生産の困難さ:中には種子から開花まで数十年かかるものも。

私たちができること

  • 購入時は信頼できるナーセリー・生産者からの栽培株を選びましょう。
  • 位置情報付きでのSNS投稿は避ける。密猟のヒントになる可能性があります。
  • 絶滅危惧種の現状を知ることが第一歩です。知識の共有が保全活動につながります。

この記事が、絶滅危惧種となっている多肉植物への理解を深める一助となれば幸いです。

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